360度フィードバックの書き方サンプル集
アサーティブコミュニケーション実践ガイド
目次
1. 改善を期待する点を伝えにくい心理的背景
- 人間関係が悪くなるのが怖い
- 相手から反発されるのが心配
- 「批判している」と思われたくない
- どう言えば伝わるか分からない
こうした不安から、「言わないで我慢する」か「感情的にぶつけてしまう」かの両極端になりがちです。そこで役立つのがアサーティブコミュニケーションです。
2. アサーティブコミュニケーションの基本姿勢
- 相手を攻撃しない:人格ではなく行動に焦点を当てる
- 自分の感情を大切にする:「私は〜と感じた」とIメッセージで伝える
- 改善につながる具体性:曖昧ではなく、次の行動につながる形で伝える
3. 改善を期待する場面で使えるフレームワーク「DESC法」
DESC法とは?
- Describe(描写):事実を客観的に伝える
- Express(感情):自分の気持ちを伝える
- Specify(要望):改善してほしい行動を具体的に示す
- Consequence(結果):実行したらどう良くなるかを伝える
実践例
×「あなたって本当にだらしないね」
○「昨日の会議で報告が30分遅れました。私は進行が難しいと感じました。次回は開始前に提出していただけると、議論がスムーズに進むと思います。」
4. ハラスメントにならない工夫
- 「あなた」ではなく「私は」を主語にする
- 人格批判ではなく行動にフォーカスする
- 過去を責めず「未来志向」で終える
例
×:「いつも遅れてばかりでやる気がないんですか?」
○:「今朝の打ち合わせに15分遅れたので、私は進行に困りました。次回は時間通りに来てもらえると助かります。」
5. 360度フィードバックの導入で出てくる悩み
360度フィードバックは「上司・部下・同僚」から多方向に意見を集められる便利な仕組みですが、次のような声が出やすいです。
- 「素直に書きにくい」
- 「改善点を書くと恨まれないか心配」
- 「どう表現していいか分からない」
これを解消するには、書き方の枠組みと安全性の確保が重要です。
6. 書きやすくする工夫
(1) フレームワークを導入する
自由記述よりも、決まった枠に沿って書く方が安心です。例えば:
- Keep(良かった点)
- Expect(改善を期待する点)
- Try(今後への提案や期待)
(2) アサーティブ表現をルール化
- 行動ベース:「会議に10分遅れることがあった」
- Iメッセージ:「私は進行が難しく感じた」
- 未来志向:「次は時間通りに始められると助かる」
(3) 匿名性を確保
- 個人が特定されるリスクを減らす
- コメントは集約してフィードバックする
7. 360度フィードバック記入シート(サンプル)
1. 強み・良い点(Keep)
質問例
- この人と仕事をしていて助かったことは?
- この人の強みや良い習慣は?
例文
- 「資料作成のスピードが速く、期限前に完成しているので助かっています。」
- 「会議で相手の話をよく聞いてまとめる力があると思います。」
2. 改善を期待したい点(Expect)
質問例
- 改善されるともっと働きやすくなることは?
- 工夫してほしいと感じた場面は?
例文
- 「会議に遅れてくることがあり、進行に影響が出ると感じました。」
- 「忙しい時に報告が後回しになることがあり、情報共有が難しく感じました。」
3. 今後への提案・期待(Try)
質問例
- 今後さらに成果を出すために期待する行動は?
- 一緒に働く上で「こうしてほしい」と思うことは?
例文
- 「会議前に簡単なアジェンダを共有してもらえると議論がスムーズになると思います。」
- 「進捗を週1回共有してもらえると安心して仕事を進められます。」
4. 全体コメント(任意)
例文
- 「周囲を支えてくれる姿勢がありがたく、今後も一緒に成長できるのを楽しみにしています。」
- 「改善点も含め、期待が大きいからこそ書かせてもらいました。」
8. ハラスメント防止ルール
- 人格批判は禁止:「だらしない」「向いていない」などはNG
- 行動ベースで具体的に:「会議に遅れる」「報告が遅れる」など
- 未来志向で終える:「次はこうしてほしい」でまとめる
まとめ
- 伝え方は「攻撃」ではなく「改善への期待」に切り替える
- アサーティブコミュニケーション(DESC法)で、相手を尊重しつつ率直に伝える
- 360度フィードバックは「Keep・Expect・Try」の枠組みで書くと素直に表現できる
- 匿名性や心理的安全性を確保し、受け取る側の心構えも育てる