平田 京子
360度フィードバックの書き方サンプル集
2025年9月17日(水)

職場や組織で「改善を期待する点を伝える」のは、多くの人にとって心理的にハードルが高いものです。
特に、ハラスメントにならずに相手の行動を改善へ導く伝え方や、360度フィードバックを素直に書く方法に悩む方は少なくありません。
この記事では、アサーティブコミュニケーションをベースに、具体的な伝え方や360度フィードバックのサンプルを詳しくまとめました。

 

360度フィードバックの書き方サンプル集

アサーティブコミュニケーション実践ガイド

目次

  1. 改善を期待する点を伝えにくい心理的背景
  2. アサーティブコミュニケーションの基本姿勢
  3. 改善を期待する場面で使えるDESC法
  4. ハラスメントにならない工夫
  5. 360度フィードバックで出てくる悩み
  6. 書きやすくする工夫
  7. 360度フィードバック記入シート(サンプル)
  8. ハラスメント防止ルール
  9. まとめ

1. 改善を期待する点を伝えにくい心理的背景

  • 人間関係が悪くなるのが怖い
  • 相手から反発されるのが心配
  • 「批判している」と思われたくない
  • どう言えば伝わるか分からない

こうした不安から、「言わないで我慢する」か「感情的にぶつけてしまう」かの両極端になりがちです。そこで役立つのがアサーティブコミュニケーションです。


2. アサーティブコミュニケーションの基本姿勢

  1. 相手を攻撃しない:人格ではなく行動に焦点を当てる
  2. 自分の感情を大切にする:「私は〜と感じた」とIメッセージで伝える
  3. 改善につながる具体性:曖昧ではなく、次の行動につながる形で伝える

3. 改善を期待する場面で使えるフレームワーク「DESC法」

DESC法とは?

  1. Describe(描写):事実を客観的に伝える
  2. Express(感情):自分の気持ちを伝える
  3. Specify(要望):改善してほしい行動を具体的に示す
  4. Consequence(結果):実行したらどう良くなるかを伝える

実践例

×「あなたって本当にだらしないね」

○「昨日の会議で報告が30分遅れました。私は進行が難しいと感じました。次回は開始前に提出していただけると、議論がスムーズに進むと思います。」


4. ハラスメントにならない工夫

  • 「あなた」ではなく「私は」を主語にする
  • 人格批判ではなく行動にフォーカスする
  • 過去を責めず「未来志向」で終える

×:「いつも遅れてばかりでやる気がないんですか?」

○:「今朝の打ち合わせに15分遅れたので、私は進行に困りました。次回は時間通りに来てもらえると助かります。」


5. 360度フィードバックの導入で出てくる悩み

360度フィードバックは「上司・部下・同僚」から多方向に意見を集められる便利な仕組みですが、次のような声が出やすいです。

  • 「素直に書きにくい」
  • 「改善点を書くと恨まれないか心配」
  • 「どう表現していいか分からない」

これを解消するには、書き方の枠組み安全性の確保が重要です。


6. 書きやすくする工夫

(1) フレームワークを導入する

自由記述よりも、決まった枠に沿って書く方が安心です。例えば:

  • Keep(良かった点)
  • Expect(改善を期待する点)
  • Try(今後への提案や期待)

(2) アサーティブ表現をルール化

  • 行動ベース:「会議に10分遅れることがあった」
  • Iメッセージ:「私は進行が難しく感じた」
  • 未来志向:「次は時間通りに始められると助かる」

(3) 匿名性を確保

  • 個人が特定されるリスクを減らす
  • コメントは集約してフィードバックする

7. 360度フィードバック記入シート(サンプル)

1. 強み・良い点(Keep)

質問例

  • この人と仕事をしていて助かったことは?
  • この人の強みや良い習慣は?

例文

  • 「資料作成のスピードが速く、期限前に完成しているので助かっています。」
  • 「会議で相手の話をよく聞いてまとめる力があると思います。」

2. 改善を期待したい点(Expect)

質問例

  • 改善されるともっと働きやすくなることは?
  • 工夫してほしいと感じた場面は?

例文

  • 「会議に遅れてくることがあり、進行に影響が出ると感じました。」
  • 「忙しい時に報告が後回しになることがあり、情報共有が難しく感じました。」

3. 今後への提案・期待(Try)

質問例

  • 今後さらに成果を出すために期待する行動は?
  • 一緒に働く上で「こうしてほしい」と思うことは?

例文

  • 「会議前に簡単なアジェンダを共有してもらえると議論がスムーズになると思います。」
  • 「進捗を週1回共有してもらえると安心して仕事を進められます。」

4. 全体コメント(任意)

例文

  • 「周囲を支えてくれる姿勢がありがたく、今後も一緒に成長できるのを楽しみにしています。」
  • 「改善点も含め、期待が大きいからこそ書かせてもらいました。」

8. ハラスメント防止ルール

  • 人格批判は禁止:「だらしない」「向いていない」などはNG
  • 行動ベースで具体的に:「会議に遅れる」「報告が遅れる」など
  • 未来志向で終える:「次はこうしてほしい」でまとめる

まとめ

  • 伝え方は「攻撃」ではなく「改善への期待」に切り替える
  • アサーティブコミュニケーション(DESC法)で、相手を尊重しつつ率直に伝える
  • 360度フィードバックは「Keep・Expect・Try」の枠組みで書くと素直に表現できる
  • 匿名性や心理的安全性を確保し、受け取る側の心構えも育てる